【BGP入門】インターネット(ピアリング)の世界について学んでみよう!

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はじめに

こんにちは。ネットワークエンジニアの「だいまる」です。

この記事からBGPを利用したインターネット(ピアリング)の世界やBGPそのものについてまとめるシリーズになります。

そもそもBGPとは?

BGP(Broder Gateway Protocol)とは、外部接続向けのプロトコルであるEGPの代表例であり、世界的に利用されるプロトコルになります。

このプロトコルは、各通信事業者やISP、コンテンツ事業者が自身のネットワークを管理するために所持しているAS(Autonoumous System)間を接続するために利用されます。

2年前に会社が変わり、ピアリングの世界にも足を踏み入れたのですが、とても面白い世界だなと思います。

その世界で覚えるべきことがいくつかあるので、その説明をしたいと思います。

インターネットの世界で重要な「Tier」

インターネットの世界で重要な用語の1つに「Tier」があります。

「Tier」とは、「インターネットにつなぐために保持している経路数の規模や組織の強さ」を示すものと思ってもらえればいいです。

これは、Tier1>Tier2>Tier3・・・と数が小さいほど規模が大きかったり、立場が強いAS番号(組織)になります。

特に「Tier 1」は、フルルート(インターネット上の全経路)を保持しているため、立場が非常に強いです。

なぜフルルート(インターネット上の全経路)を持っている組織の立場が強いのか?

その答えは、「様々なサービスへの接続しやすさ」になります。

昨今のインターネットの世界では、何も意識せずにどんなアプリやサイトでも繋がるのが当たり前になっています。

しかし、所持経路が少ない小規模な組織だと接続したいアプリやサイトに辿り着かない場合が存在します。

理解しやすいイメージとしては、私違が普段利用する道路を例に考えます。

例えば、以下の図のような市町村が存在し、各市町村を接続する道路があったとします

この場合、C区を通過しないと他の市町村に行くことはできません

そのため、C区の道路は重要度が増すため、交通料を徴収されても利用するでしょう。

Tier1とは、他のネットワーク(市町村)への経路(道路)を数多く持っているため、影響度が大きくなるのです。

Tier 1にはどんな企業・組織があるのか?

ネットで検索すればわかりますが、主にインターネットの黎明期から存在した企業が多いと思います。(大半が米国企業)

No企業名AS番号
1AT&Tアメリカ7018
2Deutsche Telekom Global Carrierドイツ3320
3GTT Comアメリカ3257
4Liberty Globalイギリス6830
5ルーメンテクノロジーズアメリカ3356
6NTT Com日本2914
7オレンジフランス5511
8PCCWグローバル香港(中国)3491
9Tモバイルアメリカ1239
10タタコミュニケーションズインド6453
11イタリアテレコムイタリア6762
12ベライゾンアメリカ701
13Zayoアメリカ6461
14Arelionスウェーデン1299
15Telxiusスペイン12956
Tier1 一覧

しかし、近年はこのTier1の影響度が変わりつつあります。

その理由は、GAFAがTier1に匹敵する経路数を持つようになってきており、Tier1でなくてもフルルート(インターネット上の全経路)を受信することができるようになりつつあるからです。

AS同士をつなぐ「ピアリング」

「Tier」を理解した後は、AS同士を接続しインターネットに接続するための経路を交換する「ピアリング」について説明したいと思います。

ピアリング業界には、「トランジット」、「パブリックピアリング」、「プライベートピアリング」の3つがあります。

用語①:トランジット

トランジットとは、「フルルート(インターネット上の全経路)を所持するAS(組織)とBGPピアを接続し、全経路を受信する接続形式」になります。

この接続形式は、提供する企業のサービス条件によって異なりますが、基本的に最低利用料を示すコミット値と1Mbpsあたりの料金を示すメガ単価を合わせて、費用が請求されます。

パブリックピアやプライベートピアと比較すると高額になります。

このサービスは、日本の場合、BBIXやKDDI、NCOMといったIX事業者が主に取り扱っています。

AS X
AS X
AS Y
AS Y
AS A
AS A
AS W
AS W
AS Yは
各ASと接続
AS Yは…
AS XはAS Yの接続1つだけで
フルルートがもらえる
AS XはAS Yの接続1つだけで…
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用語②:プライベートピアリング(PNI)

ピアリングとは「各AS同士がBGPピアを張ることで経路を交換する接続方式」です。

その中の1つであるプライベートピアリング(PNI)は「2つのAS(事業者)が個別でピアリングを行う接続方式」です。

一般的には各事業者が物理接続のための専用線やDC内部の構内配線を準備し接続します。

メリットが大きくない場合、費用が発生するため、赤字になる可能性があります。

そのため、同規模のAS同士の接続やプライベートピアリングによる費用削減効果が見込めない限り、実施されない方式です。

AS X
AS X
AS Y
AS Y
AS W
AS W
各AS IX事業者を介さないで接続
各AS IX事業者を介さないで接続
直接接続
直接接続
直接接続
直接接続
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用語③:パブリックピアリング

パブリックピアリングとは「IX事業者が管理するネットワークに接続し、各事業者でピアリングを行う接続形式」です。

プライベートピアリングでは、物理接続のための回線は自分たちで手配するため、費用や手間が発生します。

そこでIX事業者が用意したネットワークに接続し、各事業者間で調整し、BGPピアの開通だけ行うのが「パブリックピアリング」になります。

この接続形式は、IX事業者や各事業者、双方にメリットが生まれます。

IX事業者は、IXネットワークに接続するための料金を請求するため、利益が生まれます

また、より多くの事業者が接続することで優位性が増します

日本はBBIXやIMF、JPIXが該当するよ!

一方、各事業者はプライベートピアリングの調整を行わずに、BGPピア開通の調整のみとなります。

一般的にIX事業者への支払額は定額料金であることが多いです。

ただ、BGPピア開通の調整のみと言いましたが、実際は各事業者のネットワーク構成や帯域を考慮する必要があります。

その確認は「Peering DB」と呼ばれるサイトがあるので、このサイトでも確認できます。

実際、各事業者が集まるデータセンタが優位性が高くなり、サーバルームの空きがなく、大変人気となっております。

AS X
AS X
IX 事業者
NW
IX 事業者…
AS Y
AS Y
AS W
AS W
各AS共にIX事業者のNWに接続
各AS共にIX事業者のNWに接続
IX事業者NWを通してAS XとAS Wでピアリング
→これが「パブリックピアリング」
IX事業者NWを通してAS XとAS Wでピアリング…
AS XとAS Yはピアリングなし
同一IX事業者に接続はある
AS XとAS Yはピアリングなし…
AS YとAS Wはピアリングなし
同一IX事業者に接続はある
AS YとAS Wはピアリングなし…
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最後に

インターネットの世界(ピアリングの世界)について、簡単にまとめてみました。

その他の記事ではBGPについて詳しくまとめているので、ぜひご参照頂ければと思います。

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